オルニチンが二日酔いに効く
しじみ効果で注目されるオルニチンですが、 その二日酔いに対するメカニズムは、 他の二日酔い予防薬(栄養素)とは完全に異なります。オルニチンは、 Lシステイン、 クルクミン、アラニン、セサミンのように、アルコールやアセトアルデヒドの分解を促進するものではありません。
オルニチンは二日酔い、 アルコールに対して独自の効果・メカニズムを有します。
そのため、他の栄養素と併用することで、 二日酔いの防止により効果を発揮します。
ここではオルニチンについて、 二日酔いに対する効果とそのメカニズム、 その他効果、オルニチンを多く含む食品、より効果的な摂取方法、摂取タイミング、摂取量、副作用などについて紹介しています。
オルニチンとは
「オルニチン=(イコール)シジミ」と思われがちですが、 オルニチンは体内で製造される非必須アミノ酸です。そのため、食品として摂取する以外に、 タンパク質を構成するアルギニンという物質を摂取することで、 体内で生合成することもできます。
(アルギナーゼによって分解される時に生成され、 オルニチンと尿素に分解されます。)
その為、しじみを食べないとオルチニン不足になると言うわけではなく、 また、必須アミノ酸でも無いため、毎日取る必要もありません。
しかし、オルニチンには二日酔いの解消を始め、様々な効果があります。
オルニチンがなぜ二日酔いに効果があるのか
オルニチンがなぜ二日酔いに効果があるのか
■二日酔いに対する効果・効能
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二日酔いに対する効果・効能
オルニチンは二日酔いによる「疲労」、「目覚めの不快感」、「睡眠不足」に効果があります。2013年日本で行われた研究(※1)によると、 11名のお酒に弱い人(アセトアルデヒド脱水素酵素欠損症を有するヒト)に対して、 飲酒30分後にオルニチンを摂取し、翌朝の目覚めを調査したところ、 プラセボ群(ニセ薬)と比較して、 目覚めの疲労感、不快感(怒り、混乱)などが減少したほか、 睡眠の長さの改善が見られました。
参考:
※1:2013年 Kokubo,T(キリンホールディングス株式会社)ら「無作為化、ダブルマスク、プラセボ対照クロスオーバー試験、 アルコール消費翌朝の唾液コルチゾール、flushers(アセトアルデヒド分解酵素欠損者)の疲労感に対するL-オルニチンの効果」
※1:2013年 Kokubo,T(キリンホールディングス株式会社)ら「無作為化、ダブルマスク、プラセボ対照クロスオーバー試験、 アルコール消費翌朝の唾液コルチゾール、flushers(アセトアルデヒド分解酵素欠損者)の疲労感に対するL-オルニチンの効果」
二日酔い解消のメカニズム(アンモニア除去)
上記研究において、 「オルニチン摂取群と、プラセボ群(ニセ薬)の間に、 アルコール代謝速度の差は見られなかった。」と発表しているとおり、 オルニチンの二日酔いに対するこれら効果は、 アルコール代謝の促進やアセトアルデヒド分解を早めることによる効果ではありません。オルニチンが二日酔いに効果があるのは、 オルニチンによる「アンモニア除去」が関わっていると考えられています。
オルニチンは尿素サイクルにおける律速段階(※1)(複数の経路があり、最も遅い経路により全体の速さが決まってしまう)であり、 有毒であるアンモニアを減少させ、無毒の尿素を増加させます。
アルコールの摂取により、その代謝過程でアンモニアが増加します(※4)が、 脳や骨格筋にアンモニアが蓄積すると、 疲労感を誘導します。(※2、※3)
オルニチンは、 このアルコールによって増えるアンモニア除去速度を早める(※1)ことにより、 二日酔い時の疲労感を解消します。
また、二日酔いによる不快感と睡眠の改善については、 後述するオルニチンの効果「コルチゾールの減少」と「睡眠の改善」をご参照下さい。
参考:
※1:1984年 Metoki K「分離された肝細胞における尿素合成で可能な速度制限要因:肝細胞およびミトコンドリアへのオルニチンの輸送」
※2:1983年 Mutch BJ「運動と疲労におけるアンモニア代謝:レビュー」
※3:2005年 Nybo L(デンマーク アウグスト・クローグ研究所)「ヒトでの長時間の運動時の脳のアンモニアの取り込みおよび蓄積」
※4:2008年 Rejniuk VL(ロシア)「アンモニアはラットにおけるエタノールの致死効果を増強する」
※1:1984年 Metoki K「分離された肝細胞における尿素合成で可能な速度制限要因:肝細胞およびミトコンドリアへのオルニチンの輸送」
※2:1983年 Mutch BJ「運動と疲労におけるアンモニア代謝:レビュー」
※3:2005年 Nybo L(デンマーク アウグスト・クローグ研究所)「ヒトでの長時間の運動時の脳のアンモニアの取り込みおよび蓄積」
※4:2008年 Rejniuk VL(ロシア)「アンモニアはラットにおけるエタノールの致死効果を増強する」
肝臓保護
アンモニアは毒性であり、 血中アンモニア濃度が高いと、 肝臓を傷つけてしまいます。オルニチンは、Lアスパラギン酸との併用により、 これらアンモニアと肝臓に関係のある 肝硬変、高アンモニア血症、肝性脳症(肝臓と血中アンモニア濃度の増加による認知機能低下などの症状を有する病気)の治療に用いられます。
ドイツで行われた研究(※1)によると、 126名の患者に対して、 L-オルニチン-L-アスパラギン酸を静脈投与したところ、 プラセボ(偽薬)群と比較して、 静脈アンモニア濃度が有意に減少したほか、 精神状態がはるかに改善しました。
その結果、「肝硬変、肝性脳症に対して、Lオルニチン、Lアスパラギン酸は有効な治療法である」と発表しており、 その他多くの研究(※2~4)で体内アルコール濃度の減少とそれによる肝臓保護効果が確認されています。
ただし、ドイツで行われた急性肝不全の死亡率の改善を測定した研究(※5)では、 アンモニア濃度の減少(10%程度改善しているが、有意差なしと判断)、 急性肝不全の死亡率の改善にはつながりませんでした。
参考:
※1:1997年 Kircheis G (ドイツ マルティン・ルター大学)「肝硬変や肝性脳症患者に対するL-オルニチン-L-アスパラギン酸注入の治療効果:プラセボ対照、二重盲検試験の結果」
※2:2011年 Ndraha S (インドネシア)「栄養失調にある肝硬変患者における脳症と栄養状態に対するL-オルニチン、L-アスパラギン酸、分枝鎖アミノ酸の効果」
※3:2014年 Yan Z(中国)「高レベルの血清ガンマ - グルタミルトランスフェラーゼを有する患者の慢性肝疾患の治療に対するL-オルニチン、L-アスパラギン酸顆粒の効果」
※4:2010年 Demura S(金沢大学)「インクリメンタル網羅エルゴメーター自転車運動時のパフォーマンスと、 運動中および運動後のアンモニア代謝に対するL-オルニチン塩酸塩の摂取の効果」
※5:2009年 Acharya SK(全インド医科大学)ら「急性肝不全におけるL-オルニチンL-アスパラギン酸の効果:二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験」
※1:1997年 Kircheis G (ドイツ マルティン・ルター大学)「肝硬変や肝性脳症患者に対するL-オルニチン-L-アスパラギン酸注入の治療効果:プラセボ対照、二重盲検試験の結果」
※2:2011年 Ndraha S (インドネシア)「栄養失調にある肝硬変患者における脳症と栄養状態に対するL-オルニチン、L-アスパラギン酸、分枝鎖アミノ酸の効果」
※3:2014年 Yan Z(中国)「高レベルの血清ガンマ - グルタミルトランスフェラーゼを有する患者の慢性肝疾患の治療に対するL-オルニチン、L-アスパラギン酸顆粒の効果」
※4:2010年 Demura S(金沢大学)「インクリメンタル網羅エルゴメーター自転車運動時のパフォーマンスと、 運動中および運動後のアンモニア代謝に対するL-オルニチン塩酸塩の摂取の効果」
※5:2009年 Acharya SK(全インド医科大学)ら「急性肝不全におけるL-オルニチンL-アスパラギン酸の効果:二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験」
オルニチンの効果
オルニチンは二日酔いに関わる症状だけでなく、 疲労回復やストレスの減少、アンチエイジングなどにも効果があります。
オルニチンのその他効果
■二日酔いと関係する効果
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疲労回復
身体的疲労とL-オルニチン投与の効果を調べた研究(※1)によると、 17人の健康なボランティアに対して、L-オルニチンを投与したところ、 プラセボ(偽薬)と比較して、 主観的な疲労が減少しました。特に、女性の被験者では、 主観的疲労が有意に低くなっていただけでなく、 10秒間最大ペダリングの平均速度の低下も有意に低くなっていました。
またこれら結果に対して、 「オルニチンが、エネルギー消費の効率を増加させ、 アンモニアの排出を促進することにより、 抗疲労作用を有することを示唆している」と発表しています。
参考:
※1:2008年 Sugino T(日本)「L-オルニチン補充は、脂質及びアミノ酸代謝を調節することにより、健康なボランティアにおける肉体的疲労を減衰させる」
※1:2008年 Sugino T(日本)「L-オルニチン補充は、脂質及びアミノ酸代謝を調節することにより、健康なボランティアにおける肉体的疲労を減衰させる」
ストレス減少(コルチゾール減少)、睡眠の改善
コルチゾールはストレスによって増えるだけでなく、 アルコール摂取によっても増加します。オルニチンはこのコルチゾールを減らす働きがあります。
52名の被験者が参加した研究(※1)によると、 L-オルニチン(400mg/日)を摂取したグループは、 プラセボ群(偽薬)と比較して、 血清コルチゾールレベル、コルチゾール/ DHEA-S比率が有意に減少していました。
また怒りが減少したほか、睡眠の質も改善していました。
これら結果より、 「L-オルニチン補充は、 主観的および客観的にストレスを解消し、 疲労に関連する睡眠の質を向上させる可能性がある」と発表しています。
参考:
※1:2014年 Mika Miyake(キリン株式会社)「健康な労働者におけるストレスマーカーと睡眠の質に対するL-オルニチンの効果。ランダム化比較試験」
※1:2014年 Mika Miyake(キリン株式会社)「健康な労働者におけるストレスマーカーと睡眠の質に対するL-オルニチンの効果。ランダム化比較試験」
アンチエイジング(成長ホルモン)
ボディビルダーに好まれる栄養素の1つが、オルニチンとアルギニン入りのプロテインです。その理由は抗疲労効果以外に、成長ホルモンの分泌を促すためです。
ある研究(※1)によると、 12名のボディビルダーにオルニチンを投与したところ、 用量に関わらず成長ホルモンの分泌が増加し、 特に最大用量(170mg)では、40mg、100mgと比較して大幅に増加しました。
また別の研究(※2)では、 アルギニンとオルニチンと成長ホルモン(インスリン様成長因子を含む)の関係を調べたところ、 アルギニンおよびオルニチンは成長ホルモンとIGF-1(インスリン様成長因子)を有意に増加させました。
参考:
※1:1990年 Luke Bucciら「ボディビルダーにおけるオルニチン摂取と成長ホルモン放出」
※1:2010年 Zajac A(ポーランド イェジ・ククチカ体育アカデミー)「アルギニンとオルニチン補給は強度に訓練された選手において重抵抗運動後、血清レベルの成長ホルモンとインスリン様成長因子を増加させる」
※1:1990年 Luke Bucciら「ボディビルダーにおけるオルニチン摂取と成長ホルモン放出」
※1:2010年 Zajac A(ポーランド イェジ・ククチカ体育アカデミー)「アルギニンとオルニチン補給は強度に訓練された選手において重抵抗運動後、血清レベルの成長ホルモンとインスリン様成長因子を増加させる」
その他
その他オルニチンは、運動性のの改善、 傷や火傷を通常よりも早く回復される機能があります。オルニチンを多く含む食品
L-オルニチンは、様々な食品に含まれるものの、 その量は通常非常に少なくなっています。
オルニチンを多く含む食品
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また、 オルニチンはアルギニンから生合成されるため、 アルギニンを摂取することでも体内で合成することができます。
アルギニンはタンパク質を含む食品ほど多く含まれており、 食品としては肉、ナッツ、魚、大豆などに多く含まれます。
アルギニンを多く含む食品
鶏肉(胸) | 1,500mg | はまち | 1,100mg |
牛肉(サーロイン) | 1,200mg | カシューナッツ | 2,300mg |
豚肉(ロース) | 1,300mg | ゴマ | 2,700mg |
ブリ | 1,200mg |
※100gあたり
オルニチンのサプリメント
オルニチンを含むサプリメントも複数販売されています。より効果的な摂取方法、摂取タイミング
上記研究(二日酔いに対する効果・効能 ご参照)でも用いられている様に、 オルニチンは夜、お酒を飲んだ後、摂取するのがより効果的です。特に目覚めの不快感の解消や、睡眠の改善、睡眠改善による疲労感の解消は、 睡眠前でないと効果がありません。
また、オルニチンは摂取後45分でピークに達し、 その後4~6時間効果が持続します。
そのため、睡眠前に飲むと、睡眠中に効果が現れ、 二日酔いの症状改善に効果を発揮します。
摂取量
ヒト臨床試験、研究に用いられるオルニチンの用量は、 2~6g程度が多く、 この用量は安全と考えられます。また、多くの市販品(オルニチンのサプリメント)は、 500mg~1,000mg程度で、 2gよりも少なく安全と考えられます。
副作用
副作用を引き起こす高容量摂取に関わる研究、 また特定の条件を持つヒトに対する副作用に関わる研究は、 信頼性の高い情報・研究が不足しています。オルニチン 先頭へ |
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